農業はインフラである

起業

農業にはインフラとしての側面もあると考えている。

インフラというと、

  • 電気
  • 水道
  • 道路
  • 鉄道
  • インターネット

などを思い浮かべる人が多いだろう。

これらは普段あまり意識されない。 
しかし、無くなった瞬間に社会が機能しなくなる。

農業も同じである。
普段、私たちはスーパーやコンビニで食料を購入している。
その供給を支えているのが農業である。

食料供給が途絶えれば、
人は生活できない。
経済活動も成り立たない。

つまり農業は、
社会を支える基盤の一つなのである。

農業は不安定を安定させたインフラである

ただし、農業には大きな矛盾がある。
農業は不確定要素の多い産業である。

  • 天候に左右される
  • 病害虫にも左右される
  • 収穫量も変動する
  • 価格も変動する

工場のように、
毎月同じ量を、
同じ品質で、
同じコストで作れるわけではない。

にもかかわらず、
社会は農業に対して安定供給を求める。

ここが農業の特殊なところである。
本来は不安定な産業でありながら、
社会からは電気や水道のような安定性を期待されているのである。

では、なぜそれが可能になっているのか。
不安定な生産を、安定した供給へ変換している仕組みがあるからである。

その代表例が、
卸売市場を中心とした市場制度や流通システムである。

食料版の東京駅「市場制度」

東京都が運営する豊洲市場や、
地方自治体が運営する各地の公設市場は、
単なる商売の場所ではない。

食料を社会へ流し続けるためのインフラでもある。

私は、卸売市場を 「食料版の東京駅」 のようなものだと考えている。

東京駅は、電車が混んでいても、空いていても、機能し続けなければならない。
利用者が多い日だけ動くわけではない。
天候が悪いからといって、簡単に止まるわけにもいかない。
社会インフラだからである。

卸売市場も同じである。
卸売市場は「野菜の東京駅」である。
全国の農家から集まった野菜や果物は、東京駅に集まる「乗客」のようなものだ。

卸売市場で売買が行われ、その後、仲卸が八百屋、スーパー、飲食店へ運んでいく。
つまり仲卸は、「電車や新幹線のような存在」である。

卸売市場は手数料を受け取りながら、この物流ネットワークを維持している。
野菜が豊作でも不作でも、
利用者が多くても少なくても、
東京駅が毎日動き続けるように、
卸売市場も毎日機能し続けなければならない。

不作で価格が暴騰していても、
豊作で価格が暴落していても、
食料を流し続けなければならない。

なぜなら、その先にはスーパー、八百屋、飲食店、そして消費者が待っているからである。
市場の役割は、
値段が高い時だけ働くことではない。
儲かる時だけ動くことでもない。
私たちの食卓へ、毎日食料を届け続けることである。

「市場制度は完璧ではないが必要な仕組みである」

もちろん、この仕組みは完全ではない。

超豊作で市場価格が暴落し、
極端な場合には、出荷しても利益が出ないような価格になることもある。

その時、農家は大きな打撃を受ける。
収穫量は多いのに、売上は減る。
手間をかけて作った作物が、安値で取引される。

これは農家にとって非常に苦しい。

しかし、そのような状況でも市場は売買の機能を止めることはできない。
食料を社会へ流し続けなければならないからである。

しかし一方で、市場制度や流通システムがあるからこそ、
私たちは毎日食料を手に入れることができる。

つまり市場制度は、
農家にとって厳しい面を持ちながらも、

社会全体にとっては食料供給を支える重要な仕組みでもある。

ここを単純に「良い」「悪い」で語ることはできない。

そして、この仕組みは単なる慣習で動いているわけではない。
こうした市場の役割を支えるために、
法律による枠組みも整備されている。
その代表例が

「卸売市場法」である。

卸売市場は単なる商売の場ではない

「卸売市場法」は、
生鮮食料品等の公正な取引と円滑な流通を確保し、
国民への安定供給を支えるための法律である。

例えば中央卸売市場では、
卸売業者に対して

「受託拒否の禁止」

というルールがある。
これは、
出荷者から販売委託の申し込みがあった場合、
正当な理由がない限り引き受けを拒否してはならない、
というものである。

つまり、
儲かりそうな商品だけ集めればよい、
という仕組みではない。
市場には、豊作で値段が安い時でも、
農産物を受け入れる役割があるのである。

また、
農産物を集荷する役割と、
消費地へ供給する役割が求められているのである。

いわば、
「集荷責任」

「供給責任」

のような役割である。

市場は単なる商売の場ではない。
食料を社会へ流し続けるための公共インフラとしての側面を持っているのである。
だからこそ、
市場制度は法律によって支えられているのである。

なぜ市場制度が法律で支えられているのか

ここで重要なのは、
市場関係者が【善意】で頑張っているからではない。

卸売市場が食料流通のボトルネックだからである。
ボトルネックが止まれば、社会全体が困る。

だから法律で一定のルールを課し、
食料が流れ続ける仕組みを作っているのである。

電気や水道がそうであるように、
農業流通も完全な自由市場だけでは運営されていない。
食料は国家や社会にとって重要だからである。

だから市場は、
単なる価格形成の場ではない。
食料供給を支える社会インフラなのである。

電気や水道と同じように、
「止まることを前提としていない仕組み」
なのである。

農業は経済活動である。
しかし同時に、
食料供給を支えるインフラでもある。

今日もどこかで、
農家が出荷し、
市場が集荷し、
物流が運び、
食料は社会へ流れ続けている。

私たちの食卓は、
そうした人々と仕組みの上に成り立っているのである。

タイトルとURLをコピーしました